こんにちは!
アスレティックトレーナーズルーム BASE代表の
須川 雄介(すかわ ゆうすけ)です。
このブログでは、スポーツ現場で
アスリートのコンディション作りを
サポートする専門家
”アスレティックトレーナー”が、
アスリートや運動愛好家、また
そのご家族や指導者の方々に役立つ情報を
発信していきます!
第59回も
高校野球7イニング制と
選手を守る安全管理
について考察します
「7イニング制だけ」では
選手をケガや熱中症からは守れない
ここまでの記事では、

現在高野連が進めている
7イニング制への変更で
本当にケガや熱中症から
選手を守れるのか?
という視点から問題点と
現状の取り組みを整理しました
確かにイニング数を減らすことで
身体の負担は減るかもしれませんが、
それだけでケガや熱中症の問題が
根本的に解決するわけではありません
そこで高校野球の現場を見てきた
アスレティックトレーナーの立場から、
選手を守るために必要な具体的な仕組み
について考えてみたいと思います
提案①
全選手へのメディカルチェックの
義務化と教育の仕組みづくり
現在も甲子園出場校や各地域で
肩・肘検診や
ケガ予防・コンディショニングに関する
講習会が開催されていますが、
高野連のホームページによると
200年構想が始まった2018年からの4年間で、
都道府県高野連が助成を受けて行った
肩、ひじの検診は148回を数え、
約2万人が受診しています。
検診を実施したことのある都道府県連盟は26で、小・中学生も対象としたのは
半数の13連盟です。
また、講習会は69回開催され、
計約8000人が参加しました。
-公益財団法人 日本高等学校野球連盟HP
(けが予防 | 200年構想 | 日本高等学校野球連盟)
より引用
一見多いようですが、この期間の
部員数:約57万人
都道府県連盟数:47
ということを考えると、
十分広まっているとは言えません
野球で起きるケガの多くは、
ある日突然痛めるわけではなく
可動域不足や身体能力不足
余計な負担がかかるフォーム
アップ不足、投球後のケア不足
などによる
負担の蓄積が限界を超えた時に起こります
こういったケガを防ぐために大事なのは、
余計な負担をかけない・
負担に負けない身体づくりの
方法を知っていること
ケガの原因になりうる
自分の欠点・
ケガの予兆を早期発見して
悪化させないこと
本気で全選手のための
ケガ予防の取り組みを目指すのであれば、
これらを
それぞれの地域やチームに任せるのではなく、
高野連が主体となって医療機関と連携し
制度化・義務化するくらいの
取り組みが必要だと思います
提案②
クーリングタイムのマニュアル化と
環境整備
前回の記事でご紹介したように、
近年、甲子園大会では
クーリングタイムが導入され、
専門家の指導のもと
体温調節や水分補給が行われています
地方大会でも同様に
クーリングタイムは設定されていますし、
高野連のHPでも
熱中症対策の取り組み方が紹介されています

しかし熱中症対策の実践は
各チームに任されてしまっているのが現状です
その結果、ただ日陰で休むだけで終わったり
「十分な」水分補給や体温調節が行えていない
ケースも多く見受けられます
私がサポートしているチームでは
大会の2週間以上前から
暑熱順化トレーニング
当日の水分・塩分補給、体温管理
などを徹底した結果、
夏の大会で4試合を戦って熱中症は0人
でした
しかしこのチームでは幸いにも
指導陣や各ご家庭の理解と協力があって
対策を万全にこなすことが出来ましたが、
実際にやってみると十分に実践するためには
かなり多くの時間と準備が必要になります
地方大会で部員が少なく
連合チームでの出場なども増えている現状で、
全てのチームがこの準備を自前で整えるのは
現実的ではないように感じます
そこで甲子園大会と同様に地方大会でも
というように、
最低限のマニュアルや設備を
全チームが同じ基準で実施できる
仕組みがあれば、
さらに熱中症のリスクは減らせるはずです

この開催時期や場所などの環境については
すでに議論されていて、中には

涼しいドーム球場でやれば
いいんじゃない?
なんて意見もあります
しかし元高校球児としてはやはり
「甲子園球場でプレーする」
ことに意味があると思いますので、
開催時期を変更して
少しでもプレーに適した環境で
試合が行われる可能性を高める
ことも考えるべきでしょう
提案④
試合中の応急処置に関するルール改定
しかしどれだけキチンと対策をしていても、
運動やスポーツにおいては
ケガや事故の可能性を0にすることはできません
それを踏まえてもう1つ危惧しているのが
ケガや事故が起きた時の救急体制です
現状の高校野球のルールでは、
試合中にトレーナーなどの専門家は
ベンチやグラウンド内には入れません
上位の試合や甲子園大会では
医師や理学療法士が待機していますが、


基本的にはグラウンド上での判断は
審判が行う
そして特に地方大会では、結局
指導者や選手同士でとりあえず
ストレッチやアイシングをしたり
担架で外に出したりしているのが
現状
これは非常に危険です!!!
本来、
今の状態はどのくらい危険なのか?
応急処置すれば
プレーを続けられる状態なのか?
病院に搬送するべきなのか?
救急車を呼ぶべきなのか?
どうやって安全な場所まで運ぶか?
どういった応急処置をすべきか?
といった判断や対応は
専門的な知識や技術が必要になります
よくケガや事故の後に
本人の「大丈夫!」という言葉を
鵜吞みにしてプレー続行した話が
美談になりますが、
我々のような専門家からすれば
冗談ではありません
プロのトレーナーですら
定期的に練習や講習を行って
準備しているような対応を、
ボランティアの、
ましてや医療専門職でもない
審判の皆さんに判断を求めるのは
あまりにも酷ではないでしょうか?
プロ野球や他競技では、
ベンチにトレーナーが常駐していて
万が一の際には
すぐにグラウンドに飛び出して
応急処置をするのが当たり前です
すべてのチームに専属トレーナーをつけるのが
難しいのであれば、
といった仕組みが必要だと思います
まとめ
今回の話で指導者や保護者、審判さんなど
現場の皆さんを批判する意図は一切ありません
それぞれの環境や経験の中で身を粉にして
選手たちを支えている皆さんには
頭が上がりませんし、
学校現場でも働き方改革が叫ばれる中で
これ以上現場に専門的な対応を求めるのは
酷だと思います
私は高校野球7イニング制に対しては
絶対反対!というわけではありませんが、
7回制変更にかかる労力を
安全環境の整備に使う方が
建設的ではないか
7イニング制による
ケガや熱中症の予防効果は
出場機会減少などのデメリットを上回るとは言い切れない
という風に考えています
いくらイニング数や球数を減らしても、
試合が始まるまでの
ケガや熱中症を予防する
準備
が整っていなければ
本質的な安全には繋がらないからです
とはいえこういった取り組みには
お金も労力も非常にかかります
内情に詳しい人からすれば
もしかすると
机上の空論と言われるかもしれません
しかし本当に全ての高校球児の
身体と健康を守ろうとするのであれば、


7イニング制の前に
専門的なことは専門家が支える
仕組みを作る
そこに力を注ぐべきではないでしょうか?
ハイパフォーマンススポーツセンターHP(https://www.jpnsport.go.jp/hpsc/study/conditioning/tabid/1850/Default.aspx)より画像引用
本当に大切なのは、
「何イニングなら安全か?」ではなく
「どんな環境なら安全か?」
球児たちの未来のために、
より建設的な議論が進むことを
願っています













