アスレティックトレーナーズルーム BASE」代表の須川 雄介(すかわ ゆうすけ)
です。
このブログでは、スポーツ現場で選手のコンディションを総合的にサポートする
”アスレティックトレーナー”が、アスリートや運動愛好家、またそのご家族や指導者の方々に役立つ情報を発信していきます!
第17回は、
はり治療について解説していきます❕
はじめに
皆さん、はり治療にはどんなイメージを持っていますか?
効きそうではあるけどよく分からない
痛いんじゃないの? 本当に効くの? 何に効くの?
という方も多いのではないでしょうか?
そこでこんな方のために、今回は
「はり治療ってどんなもの?何に効くの?」
ということをそれぞれ解説していきたいと思います。
はりきゅうは色々なケガや身体の不調に対応できる良い治療法ではあるのですが、
よく分からないまま不安な気持ちで受けると治療効果があまり出なかったり逆効果になる
場合もあります。
(胡散臭く聞こえるかもしれませんが、精神状態が身体の働きにも反映されるので実際に起こりえます)
もちろん人によって合う合わないというのも必ずあるので、
どんな治療なのか?自分の悩みや身体の状態に合うのか?
をまずしっかり把握してから判断してみてください。
はり治療の効果
詳しく説明すればもっと細かく色々な効果があるのですが、それはまた別の記事で詳しく説明します。
イメージとして大まかにこのような効果があるとだけ覚えておいてください❕
はり治療が効くケガ・症状
はり・きゅう治療は、WHO(世界保健機関)がこのような疾患に適応出来るというように声明を発表しています。
神経系疾患
神経痛・神経麻痺・痙攣・脳卒中後遺症・自律神経失調症・頭痛・めまい・不眠・神経症・ノイローゼ・
ヒステリー運動器系疾患
関節炎・リウマチ・頚肩腕症候群・頚椎捻挫後遺症・五十肩・腱鞘炎・腰痛・
外傷の後遺症(骨折、打撲、むちうち、捻挫)循環器系疾患
心臓神経症・動脈硬化症・高血圧低血圧症・動悸・息切れ呼吸器系疾患
気管支炎・喘息・風邪および予防消化器系疾患
胃腸病(胃炎、消化不良、胃下垂、胃酸過多、下痢、便秘)・胆嚢炎・肝機能障害・肝炎・胃十二指腸潰瘍・痔疾代謝内分泌系疾患
バセドウ氏病・糖尿病・痛風・脚気・貧血生殖、泌尿器系疾患
膀胱炎・尿道炎・性機能障害・尿閉・腎炎・前立腺肥大・陰萎婦人科系疾患
更年期障害・乳腺炎・白帯下・生理痛・月経不順・冷え性・血の道・不妊耳鼻咽喉科系疾患
中耳炎・耳鳴・難聴・メニエル氏病・鼻出血・鼻炎・ちくのう・咽喉頭炎・へんとう炎眼科系疾患
眼精疲労・仮性近視・結膜炎・疲れ目・かすみ目・ものもらい小児科疾患
セイリン株式会社 ホームページ より引用
小児神経症(夜泣き、かんむし、夜驚、消化不良、偏食、食欲不振、不眠)・小児喘息・アレルギー性湿疹・耳下腺炎・夜尿症・虚弱体質の改善
またNIH(米国国立衛生研究所)の合同声明書では、
例 えば成人の術後や薬物療法時の吐き気、嘔吐、および歯科の術後痛
に鍼が有効であるという有望な結果が得られている。
また、薬物中毒、脳卒中のリハビリ、頭痛、月経痛 、テニス肘、線維性筋痛、
筋筋膜性疼痛、変形性関節炎 、腰痛、手根管症候群、喘息 などに対しては、補助的ないしは代替的治療法として、
全日本鍼灸学会雑誌48巻2号「紹介 米国国立衛生研究所( NIH )合意形成声明」より引用
あるいは総合的な管理計画の中に含めて、鍼を利用すれば役立つ可能性がある。
さらに研究が進めば他の分野でも
鍼治療が役立つことが明らかになるであろう。
つまり、筋肉や関節など身体の痛み から 内臓・体調の不調 まで
幅広く対応できる可能性があるという事が示唆されています。
病院で受ける治療や薬と比べて、どちらが良いかという話ではありません。
一緒にやって効果が高められる場合もあれば、逆にこのリストに含まれていても
状況によっては受けてはいけない場合もあるので、きちんと専門家に相談しましょう
使用するはり
よく注射針をイメージされて
痛いんじゃないの…?
と不安になってしまう方もいらっしゃいますが、
注射針の太さは 約0.7 ~ 0.9mm
それに対して
はりきゅうの鍼の太さは 約0.16 ~ 0.30mm
(森ノ宮医療大学 HP より画像引用)
注射針 は 血管を破って薬を入れたり血液を吸入するために
中が空洞で先端が尖っている
それに対して
はりきゅうの鍼 は 皮膚や筋肉の隙間をかき分けて目的の場所に当てるために
先端が丸みを帯びている
というような違いがあるため、基本的には注射と違って
正しく打てば痛くありません
また昔は高圧蒸気(オートクレーブ)で滅菌消毒して鍼を再利用していましたが、
最近ではほとんどが使い捨て・個別包装のディスポーザブル鍼
が主流になっていて、
刺す直前まで外気に触れないので非常に衛生的です。
打たれるとどんな感じ?
これが皆さん一番気になる部分ではないでしょうか?
先ほど説明したように、
基本的には痛みが無く、打たれたことに気づかなかったという方もいるくらいです。
一方で特に筋緊張の強い部分や不調に関連する”ツボ”に鍼を入れると
響きと呼ばれる特有の感覚
(ズーンと重くなる、打った周りにジワッと刺激が広がる、ピーンと他の部位に刺激が走る
という表現が多いです)
局所性単収縮
(動かそうとしていないのに勝手に筋肉が動く)
という反応が起きます。これらは
治療すべきポイント(トリガーポイント)にちゃんとはりが入った
というサインなので、基本的に悪いものではありません。
しかしはり治療を受けた方の中では好き嫌いが分かれる感覚で、
これが無いと治療した感じがしないから、しっかり反応を出して欲しい❕
はり治療は効果が出るから受けるけど、響きは苦手だから出さないで欲しい…
響きや単収縮が怖いからはりは受けたくない❕
と様々ですが、この感覚は我慢したり遠慮したりせずに、鍼灸師に伝えてくださった方が良いです。
慣れの問題もあったりしますが、我慢して受けても効果がうまく出ないばかりか
痛みや違和感に繋がってしまう場合もあります。
率直に伝えていただいた方が
・打ち方や深さ、ポイントを変えて響きや単収縮が出ないように治療する
・どうしても苦手であれば別の治療法を検討する
という風に対応する事ができます。
はり通電について
はり治療の効果をより高めるために、鍼に専用の機械を繋げて電気治療を行う場合があります。
流すのは「低周波」といって整骨院などでもよく受ける電気と同じものですが、
鍼を通じて身体に流すことで
・はり治療の効果をより高める
・通常の低周波の機械では届かない身体の深いところまで治療効果を届ける
ことが出来ます。しかしあくまで治療効果を増強するためのものに過ぎないので、
電気刺激が苦手な方や電気を受けてはいけない方は
これが無くてもはり治療の効果を出すことは出来ます。
これも我慢せずに苦手な場合はすぐ鍼灸師に伝えましょう❕
はり治療を受けてはいけない人
これまでご紹介してきたように様々な症状や状態に対応できるはり治療ですが、
以下の条件に当てはまる人は、はり刺激が健康のリスクになる場合があるため
はり治療を受けてはいけません❕ 注意しましょう
もちろん治療前に鍼灸師が責任をもって事前に確認しますが、
患者さんご自身が把握して教えてくださらないと分からないものばかりです。
「面倒だからこれくらいはいいかな…」と思わずに、必ず教えてください。
はり治療のリスク管理
はり治療に限らず、全ての治療は身体の働きを変えるため何らかのリスクがあります。
しかし、きちんと準備や対応しておけば未然に防げたり最小限に抑えることが出来ます。
我々鍼灸師も最大限気を付けてはいますが、患者さんのご協力が必要なものも多々ありますし、
事前にそういうものがあるんだと知っておいていただけると施術者側も大変助かります。
まとめ
今回は「はり治療」の概要について解説しましたが、いかがだったでしょうか?
はりに限らず、どんな治療にも相性があります。
誰かにとっての正解の治療が、あなたにとっても良いものとは限りません。
しかし治療を得体のしれないものとして敬遠するのではなく、
どんなものかを分かった上で判断して
自分に合うものを見つけるために色々試してみて欲しいと思います。
「なぜはり治療が効くのか?」は後日また別の記事にしますが、ぜひ施術してもらう鍼灸師にも聞いてみてください❕
鍼灸師は少し変わった職人肌の人が多いので(笑)、みんな喜んで解説してくれると思いますよ❕
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