ケガの応急処置の最新の方針【PEACE&LOVE】~受傷直後~

「アスレティックトレーナーズルーム BASE」代表の須川 雄介(すかわ ゆうすけ)
です。
このブログでは、スポーツ現場で選手のコンディションを総合的にサポートする
”アスレティックトレーナーが、アスリートや運動愛好家、またそのご家族や指導者の方々に役立つ情報を発信していきます!

第8回の今回は、
ケガ発生!その時の応急処置の考え方~受傷直後~
について解説します!

目次

これまでの応急処置の考え方

運動やスポーツに限らず、ケガをした際には素早い応急処置が必要となります。
応急処置を正しく行うことで、
「症状の悪化を最小限に抑える」  「早期回復」
を目指すことが出来るようになります。

以前は応急処置の考え方としてはRICEという言葉が有名でした。

そしてさらに応急処置の効果を高めるため、

PLICE  :「Protection(患部の保護)」をしっかりしましょう

POLICE : ずっと安静にするより少しずつ運動負荷をかけましょう

という風に変化してきました。
この3つの概念は「ケガの受傷直後にどうするか?」という事がメインですが、
これらにさらに最新の知見と「ケガをして時間が経った後にどうするか?」 という対処まで含めた考え方が
今回ご紹介する PEACE & LOVE になります❕

いつ、何を行うべきか?

まずケガが発生した時の経過として、
発生直後、炎症・損傷が非常に強い「急性期」
炎症が軽減し始めた「亜急性期」
炎症は軽微になったが損傷や痛みは残存している「慢性期」
という風に分かれますが、
PEACE & LOVEの概念では
PEACE受傷直後の急性期まで
LOVE ⇒翌日以降の亜急性期から慢性期
に行うべき対処を表します。

PEACE

今回はその中でも、前半のPEACE受傷直後の急性期までに何をすべきか? について解説します❕

【Protection(保護)】

テーピングやサポーター・固定具などを用いて患部を固定・保護し、
それ以上患部の状態が悪化するのを防ぎます。


当たり前に思うかもしれませんが、
病院に行くまで痛めた脚を引きずりながら歩いて行ったり、
痛いのを我慢して動かしてみたり

していませんか?
ここで悪化させると、
その時は我慢できても、後々悪化したり治癒までの時間が長引く
可能性が高くなります。
少なくとも病院で診断を受けてケガの状態が把握できるまで
はしっかり患部を保護しましょう。

【Elevation(挙上)】

患部を心臓より高い位置にすることで、患部に流れる血流を減少させます。


そうすると
患部から静脈に血流が流れやすくなって腫れや内出血を軽減する
ことが出来ます!
腫れや内出血は痛みを増悪させたりコンパートメント症候群など他の障害の原因にもなる
ため、出来る限り早く軽減させる必要があります。

【Avoid anti-inflammatories(抗炎症薬を避ける)】

以前はアイシングなどが応急処置の必須事項に入っており、「出来る限り早く炎症を抑える事」
が目標とされてきました。
しかし近年の研究で
「炎症は損傷が治るのに必要な過程であり、
アイシングや薬で炎症を抑えてしまうと治癒を阻害するかもしれない
という考え方が出てきています。


ただし、アイシングや薬を使う事全てが間違っているというわけではありません❕
そもそもアイシングを行うのは

・腫れや内出血によって血流・酸素がきちんと届かなくなり周りの健康な組織も傷んでしまう(二次損傷)のを防ぐ
・動きに支障が出るほどの強い痛みを軽減する

ことです。炎症が傷んだ組織の治癒を促す事は間違いないですが、
特に二次損傷をどのように対応するのかはまだ結論が出ていません。今後の研究が待たれます。


そこで個人的にはあくまでベースの考え方として
「何でもかんでも」「いつまでも」アイシングや薬に頼らない
という位の解釈に留めるべきだと考えています。
先ほどの「Elevation(挙上)」やこの後出てくる「Compression(圧迫)」でも解説していますが、腫れや内出血自体は出来るだけ早く抑える必要があります。
そのため自分は痛めた本当に直後で腫れや痛みが強い時にはアイシングを指示する場合もあります。ただしある程度時間が経って痛みは残っているが腫れや内出血が軽減した後までアイシングや薬を服用することは避けてもらっています。

【Compression(圧迫)】

弾性包帯やテーピングを用いて腫れや内出血を抑えます。
しかしあまり強く圧迫しすぎて血行障害や神経障害を起こさないようにしなければなりません。

・圧迫した部位より先の爪を押して色が白からピンクに戻るか
・患部より先が痺れていないか

をこまめに確認する必要があります。

【Education(教育)】

患者に患部の状態や対処法に関して正しい情報を伝え、必要以上に悲観的・楽観視したり不要な治療や薬物療法をする事、逆に過剰な負担をかけてしまう事を防ぎます。
これのために医師や専門家の判断を仰ぐ事が重要になるのですが、

ケガの状態を
必要以上に重く考えてしまう治癒の遅れに繋がり(これについてはLOVEの方でも解説します)、
逆に
軽く考えすぎてしまう負担を掛けすぎたり適切な対応が出来ずに症状を悪化させてしまいます。
またどんなに専門家が手を尽くしても、最終的にケガをした本人が気を付けなければ意味がありません。
治療をよりスムーズにするために、医師やトレーナー・治療家に任せ切りにするのではなく患者本人が正しく自分の状態を把握して治療に主体的に取り組めるようにしなければなりません。

まとめ

ここまでは受傷直後の急性期に行うべき対応 PEACE について解説しました。まずは何をすべきかについて知る事、その上で指導者やトレーナー・保護者の方は何故それをやるのか?についてまで理解をして対応できると良いと思います。
次回は受傷翌日以降の亜急性期~慢性期の対応 LOVE について解説します❕

参考:PEACE & LOVE:怪我の最新応急処置法・対処法 (therunningclinic.jp)

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この記事を書いた人

岩手県出身/
「トップアスリートの当たり前」を「みんなの当たり前」に
スポーツ科学を基に、ケガ予防・コンディション作りのための知識からエクササイズまで発信します❗

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