スポーツ現場におけるケガからの競技復帰の流れ①ケガ発生! 応急処置~医師の診断を仰ぐ

「アスレティックトレーナーズルーム BASE」代表の須川 雄介(すかわ ゆうすけ)です。
このブログでは、スポーツ現場で選手のコンディションを総合的にサポートする”アスレティックトレーナー”が、アスリートや運動愛好家、またそのご家族や指導者の方々に役立つ情報を発信していきます!

第3回からは複数回に分けて、
スポーツ現場における正しい競技復帰の流れ
について解説します!

目次

トップアスリートの現場における復帰の流れ

 特にトップアスリートの現場やトレーナーのサポートがある環境では、ケガをした後このような役割分担で競技復帰を目指していきますが、今回はその中でもケガが発生した直後の対応についてご紹介します。

ケガ発生! 応急処置

 ケガが発生した直後、まずはトレーナーや指導者などが評価と応急処置対応をします。後日解説しますが、スポーツ現場においてトレーナーは起こりうる事故やケガに対しての緊急対応計画を立てており、それに則って行動します。

第一次評価(命にかかわる問題があるかの判断)
  問題なし    問題あり 救急処置・救急搬送(119番)
   ↓      
第二次評価(ケガに関する情報収集)
  問診・視診・触診・簡易検査をしてプレー続行の可否の判断、疑いのある外傷・疾患の検討
 ⇒応急処置をして、その後病院に搬送すべきか判断     

 まずは医師の診断を仰ぐ事を考えましょう!

 「何を当たり前の事を…」と言われると思いますが、大事なポイントです。皆さんケガや身体の不調があった時に、
何となく自己判断で済ませていませんか?また治療院で「これは○○という疾患ですね!」と言われた事やインターネットでみた情報などで自分に当てはまるものを鵜吞みにしていませんか?
 意外と忘れがちな事ですが、ケガや症状の「診断」を出来るのは医師だけです。
自分のようなトレーナーやセラピストも施術にあたっては症状に対する簡単な検査・鑑別は行いますが、これは上で説明したように、あくまで「緊急性の有無」「○○の疾患の疑いがある」という判断までしか出来ません。
 もちろん全ての症状に対して病院にかからなければならないわけではないですし、診断が無ければトレーナーやセラピストが何も出来ないわけではありません。
 しかしここで大事なのは、

画像診断・精密検査をして
その症状が何によるのか(○○損傷、○○症候群、○○炎、○○病 など)
             もしくは
画像・検査上は異常がないこと(骨折、脱臼、変形、組織損傷 など)

を確認してもらうことです。
 2番目がよく分からないという方もいらっしゃると思いますが、治療の現場で

「痛みや不調があるのに、病院に行ったら異常なしとしか言われなくて…」


と言って病院を転々とする…というケースを見聞きすることがあります。
この時の考え方は大きく2つ!それぞれ解説していきます。

①骨や靭帯・関節など身体の構造上の問題は生じていない
 =緊急性の高い症状や病院以外では対応できない疾患の可能性の除外が出来た

 痛みや不調があるからといって全てに必ず組織の損傷や炎症があるわけではありません。
病院での診断・検査によって異常がないという事は、「少なくとも見た目上の損傷や炎症は起きていない」可能性が高いと言えます。そうであれば問題は何らかの損傷や炎症ではなく、

・筋肉や神経のコンディションの問題?
・姿勢や身体の使い方などの負担の掛かり方による症状?


という風に可能性を絞ってでアプローチを進めることが出来るようになるため、治療の計画を立てる上で非常に重要な情報になります。
 逆に軽いケガだと思っていたが、きちんと検査をしてみたら実は重大な損傷や疾患が隠れていたというパターンも良くあります。これは痛みや不調の強さとは必ずしも比例しません!
よく

お医者さんは大げさに言うから…

といって診断を軽視する方がいますが、最初の段階できちんとした対応や治療が出来ないと、その時は症状が軽くても後々悪化したり治るのに時間が掛かったりしてしまう可能性が高まります!医師の方はそういった部分も含めて診断している筈なので、しっかり言う事を聞きましょう!

②必要な検査が行われていない・所見の見落としがある

 もちろん再検査やセカンドオピニオンを検討しなければならないケースもあります。
例えばレントゲンは骨や関節の形の変化を調べるのには適していますが、それ以外の組織の診断については明確にならない場合もあります。その場合はMRIを用いたりするわけですが、その病院にそもそもMRIが無かったりなどの事情で十分な検査が行えない場合は、セカンドオピニオンを受けるなどの検討が必要です。画像診断の場合は、その撮影の仕方(方向・角度・位置)によっても診断の精度が変わるので、それが十分に行われているかも検討する必要があります。
 またどんな検査でも1つの検査だけで疾患を確定的に診断できるわけではありません。
あらゆる検査には「感度」と「特異度」という概念があり、詳細はまた後日説明しますが
「○○の疾患ではない事を確かめる」テスト
        と
「○○の疾患であることを確かめる」テスト
があり、それの結果を組み合わせて診断していくわけです。そのため「どちらか1つの結果だけを見て判断していないか?」「両方の検査が十分行われているか?」を判断していく必要があります。

どうやってそれを判断するか?

 上の文章を見て、大体の方が思ったことでしょう。
「2つで言ってる事が全然違うじゃないか!」
「そんな事言われても、どうやって判断して良いかなんて分からん!」


至極ごもっともです。でも安心してください、そのために我々アスレティックトレーナーやセラピストがいるのです。
 これらを判断するためには、

  • 身体の構造に関する知識
  • ケガや疾患に関する知識
  • 検査の内容と症状との関連についての知識

と様々な知識が必要ですが、きちんと勉強しているトレーナーやセラピストであれば(少なくとも国家資格を持っていれば…?)身に着けているものです。特殊な症状や検査などでその時点では分からなくても、専門的に調べたり医師とコミュニケーションを取って判断することが出来ます。

具体的な流れ

以上の流れは、プロスポーツやトップアスリートの現場ではそのアスリートが所属するチームや団体の中で医師とアスレティックトレーナー・セラピストが直接連携を取ってその中で完結できることが多いです。しかし一般的には中々そうもいかないので、実際はこのような流れになるかと思います。

パターン① 最初に病院にかかって、そのまま病院内で治療・リハビリを行う場合
⇒この場合は医師と理学療法士が直接コミュニケーションを取っており、さらに検査や鑑別が必要な場合はその中で行える。ただしあまりにも長期間症状の変化が乏しい場合には、セカンドオピニオンを検討する必要あり。

パターン② 最初に病院にかかって、治療・リハビリは他(治療院など)で行う場合
⇒かかった病院が遠い・かかりつけの治療院で治療してほしいなどの理由で治療を他で行う場合
医師の診断を患者自身が聞いてトレーナー・セラピストに伝える
 もしくは診察に同伴して直接医師から診断を聞き判断する

パターン③ 最初にトレーナーや治療院が対応し、その後病院にかかる場合
⇒スポーツ現場でトレーナーがいたり、すぐ近くに病院があった場合
⇒まずはトレーナー・セラピストが簡易検査を行い、緊急性や画像診断・精密検査の必要性を判断
 応急処置をして必要であれば病院に送る
医師の診断を患者自身が聞いてトレーナー・セラピストに伝える、
 もしくは診察に同伴して直接医師から診断を聞き判断する

まずは医師の診断をセラピストやトレーナーが正確に把握する必要があります。
 診察に同伴できればベストですが、難しければ

診断名(○○損傷、○○症候群、○○炎、○○病 など)
何の検査をしたか?(レントゲン・MRI・その他医師が直接行う検査)
治癒までの見立て(全治○○か月、何をして良い・ダメ、運動再開までの目安と基準など)


を聞いてくるようにしてください。
専門用語が多くて全部覚えるのが大変であれば、紙に書いてもらうのがベスト!
最悪どのような動き、角度で検査したかというざっくりした情報でもいいのでトレーナー・セラピストに伝えるようにしてください。

まとめ

 今回の話は、病院と治療院・トレーナーにかかるのでどちらが良い・悪いという話ではなく、役割分担がありますよという事です。トレーナー・セラピストがより正確なアプローチをするためには医師の診断が必要不可欠ですし、逆に病院では患部に対する処置はしますが(湿布・痛み止めなど)そのケガや症状の原因になる患部以外の問題(筋緊張・姿勢・身体の使い方・筋力・柔軟性など)にアプローチするのはアスレティックトレーナーやセラピストの役目です。
 もしケガの後の対応に悩んだ際は、ぜひ今回の話を思い出して専門家に相談してみてください!

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この記事を書いた人

岩手県出身/
「トップアスリートの当たり前」を「みんなの当たり前」に
スポーツ科学を基に、ケガ予防・コンディション作りのための知識からエクササイズまで発信します❗

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