「アスレティックトレーナーズルーム BASE」代表の須川 雄介(すかわ ゆうすけ)
です。
このブログでは、スポーツ現場で選手のコンディションを総合的にサポートする
”アスレティックトレーナー”が、アスリートや運動愛好家、またそのご家族や指導者の方々に役立つ情報を発信していきます!
第9回は前回に引き続き、
ケガ発生!その時の応急処置の考え方~翌日以降~
について解説します!
いつ、何を行うべきか?
まずケガが発生した時の経過として、
・発生直後、炎症・損傷が非常に強い「急性期」
・炎症が軽減し始めた「亜急性期」
・炎症は軽微になったが損傷や痛みは残存している「慢性期」
という風に分かれますが、
PEACE & LOVEの概念では
PEACE⇒受傷直後の急性期まで
LOVE ⇒翌日以降の亜急性期から慢性期
に行うべき対処を表します。
LOVE
前回の記事ではその中でも、前半のPEACE⇒受傷直後の急性期までに何をすべきか? について
解説しましたが、
今回は後半のLOVE ⇒翌日以降の亜急性期から慢性期で何をすべきか?について説明します。
【LORD(負荷)】
以前は患部をとにかく安静にして治るのを待つという考え方でしたが、
現在は「徐々に」「適切な」負荷を受傷早期からかけることで
・筋委縮や組織の癒着防止
・刺激に対して身体が反応し治癒の促進
が出来る事が分かっています。
しかしこの「徐々に」「適切な」負荷の匙加減はきちんとした身体やトレーニングの知識が必要です。
自己判断せず医師や専門家に頼りましょう!
【Optimism(楽観思考)】
「病は気から」なんて言葉がありますが、実際に症状に対してマイナスなイメージを持ちすぎてしまうと
・痛みや症状をより強く感じやすくなる
・実際の症状は改善してきているのに変化を感じにくくなる
事があるようです。
そのため患者本人が症状の治癒に対して前向きに考える事が重要であると言われています。
ただし自分も中学時代に大きなケガをしたことがあるので分かりますが、
選手自身だけに任せて
前向きに・ポジティブに考えろよ❕
と言っても絶対に無理があります。
もちろん個人差があり、性格的に出来てしまう人もいますが、
軽く考えすぎてしまって負担を掛けすぎたり適切な対応が出来ずに症状を悪化させてしまう
のも本末転倒です。
大事なのは、
Education(教育)で正しく症状の状態を把握
させた上で
ポジティブな声掛けをする
など周りからのサポートが不可欠になります。
【Vascularization(血流を増やす)】
受傷直後は挙上(Elevation)・圧迫(Compression)で血流を制限
しましたが、
数日経ったら逆に
痛みや腫れを悪化させない程度の軽い有酸素運動
<1日2回・20分程度>
をする事で
患部への血流を増加させ、栄養や酸素が届きやすくして治癒を促進
させます。
もちろん繰り返しになりますが、
運動の強度ややり方は自己判断せず医師や専門家に相談することが望ましい です。
【Exercise(運動)】
Lordでは治癒を促進するための軽度の運動でしたが、
こちらは 再発防止のためのリハビリの事です。
痛みが無くなったからOK❕
ではなく、
患部周囲の筋力・可動域・バランスなど低下した機能を
元の水準あるいはそれ以上に改善
しておかないとケガの再発や他のケガの原因になります。
まとめ
勘違いしてはいけないのは、これまでのRICE・PRICE・POLICE
の処置が全て間違っているというわけではありません。実際には共通している部分も多く、またその場の状況や資材・対応する人員のスキルなどによってこれらの対応をする場合もあります。(全てのスポーツ現場に医師やトレーナーが居れば良いのですが、中々そういうわけにもいきません…)
このLOVE&PEACEの考え方のポイントは、
・いかに組織の回復を早めるか
(炎症に対するアプローチのメリット・デメリットをしっかり把握したうえで行う)
・患者教育や心理面・運動負荷など、
その場での痛みのコントロールだけでなく長期的な視点で取り組む必要性
・専門家に任せきりになるのではなく、
専門家のサポートを受けたうえで患者自身が症状に向き合うこと
(ただマッサージや電気・鍼灸などの治療を受けるだけではなく、今の身体の状態に必要なアプローチを
ピックアップしてもらったうえで自分が治療に主体的に取り組むこと)
です。より早く・より良いコンディションで復帰するためにも最初の動きが大事になるので、内容だけでなく何故そのアプローチをするのか?まで含めて理解しましょう❕