「アスレティックトレーナーズルーム BASE」代表の須川 雄介(すかわ ゆうすけ)
です。
このブログでは、スポーツ現場で選手のコンディションを総合的にサポートする
”アスレティックトレーナー”が、アスリートや運動愛好家、またそのご家族や指導者の方々に役立つ情報を発信していきます!
第11回は、
実際どのようにウォーミングアップすればいいの?
について解説します!
はじめに
前回の記事でウォーミングアップの理論について
何でウォーミングアップが大事なのか?
身体をどのような状態にしなければならないのか?
ちゃんとやらないとどうなるのか?
をご紹介しました。今回はそれを踏まえたうえで
実際にどのようにウォーミングアップを進めていくべきか?
をご紹介していきます。
「これさえやっておけばすべてオッケー!!」というものはありません
実際に行うメニューは運動種目や身体・周囲の環境の状況などによって変わります。
(というか変えなければいけない)
今回ご紹介するのはあくまで基本的な流れのご紹介になります。
ウォーミングアップを始める前に…
運動開始2時間前くらいから、水分・栄養補給を事前にしておきましょう❕
もちろん運動中も意識して摂取する必要がありますが、
そもそも運動前にきちんと体内に水分・エネルギーが十分に無い
とパフォーマンスや体調に影響が出てしまいます。
目安としては、
水分:500㎖(ペットボトル1本)
栄養:消化の良い炭水化物(ご飯・パン・麺類など)、ゼリー飲料
ウォーミングアップの目的と全体の流れ
流れの説明をする前に、まずはウォーミングアップの目的をおさらいしましょう
体温上昇に関連する効果
・筋肉や関節が動かしやすくなる
・エネルギーの利用効率が上がる
・神経の反応スピードが上がる
体温上昇とは無関係の効果
・筋肉の血流、活動量増加
・呼吸循環機能の改善
・心理的準備
でしたね。
これとウォーミングアップの流れをまとめたものがこちらになります。
パッシブウォームアップ
パッシブ(=他動的)ウォームアップは、
自らの運動によらず外からの刺激によって効果を得ようとする
アプローチになります。
といった、外から温熱刺激を入れる方法や
で筋の緊張を取るものがこれに当たります。
パッシブウォームアップでも体温の上昇などの効果は得られますが、
この後紹介するアクティブウォームアップ(=自動的)の方が
よりエネルギー効率や呼吸循環機能の改善が得られる
ようです。
そのためパッシブウォームアップの考え方としては
運動を開始できる身体のコンディションの前準備
例)ケガや疲労などで十分にウォーミングアップが出来ない・負担が掛かりやすくなっている部分
冬の寒い時期など、普段のウォーミングアップだけでは十分に体温上昇を起こせない場合
など
と考えると良いでしょう。
有酸素・一般的ウォームアップ
ジョグ・バイク・ストレッチなど全身運動で身体全体に刺激を入れるウォーミングアップを
一般的ウォームアップ
と言います。
これを行うことで、前回解説したような
深部体温と全身の機能(筋骨格系・エネルギー供給系・呼吸循環系・神経系)を向上
させます。つまり
運動を開始できる身体のコンディション作り
がこの段階で完了しなければなりません。
具体的なウォーミングアップの目安としては
①顔に汗をかくくらい
(身体じゅうが汗だくになるくらいだと逆に疲労してしまうので注意)
(あまり長くやりすぎるとエネルギーの枯渇や体内に熱がたまりすぎてパフォーマンスが下がる)
短時間運動(10秒以内)
40~60%VO2max
5分以上の休憩
中時間(10秒~5分)・長時間(5分以上)運動
60~70%VO2max
5分未満の休憩
※VO2maxについては後日解説します。ここで押さえておいて欲しいのは、運動の種類によって適切なウォーミングアップが違うという事です。
専門的ウォームアップ
ここまでで運動を開始できる身体のコンディションが整いましたが、
これだけでは実際の競技でのパフォーマンスは発揮できません!
ここからさらに
その競技のパフォーマンスに必要な動きや要素(スピード・アジリティ・パワーなど)
を重点的に行う
必要があります。
球技であれば実際にボールを使ったもの(キャッチボール・パス練習・鳥かごなど)、
陸上競技であればスプリントドリルなどがこれに当たります。
例えば
<野球>
投球動作
スイング動作
動体視力
パワー
直線スピード
など
<サッカー>
キック動作
スプリント
方向転換
アジリティ
周辺視
など
<マラソン>
心肺機能
筋持久力
フォームの
再現性
など
というように、競技によって必要な動きや体力の要素が全く異なります。
ここで野球のウォーミングアップなのにキックの動きを良くしたり
マラソンのウォーミングアップなのにアジリティを高め
ても意味がありませんよね?
一般的ウォームアップまでは共通する部分も多いですが、このあたりから各競技やチームのカラーが見えてくるようになります。
まとめ
最初にお話ししたように、「これさえやっておけば絶対オッケー!!」というものはありません
実際には身体の状態(疲労度合い・調子の良し悪しなど)や
その時の状況(試合前か練習前か・時期・気温・場所・時間など)
によってやる内容は逐一変わることも多いです。
※実際に先日帯同していた時に、交通渋滞で試合開始20分前に球場に到着して試合をしなければならなかったことがありました。この時は最低限試合に臨むために何が必要かをピックアップしてウォーミングアップを行いました。
しかしそのように臨機応変に対応するためにも、またウォーミングアップでしっかりパフォーマンスを上げて競技に臨むためにも、最低限押さえなければならない基本をしっかり押さえておくと考えやすいと思います。
ぜひ「これまでこうやってきたから…」で何となくやるのではなく、
きちんと「今この種目を何のためにやっているのか?」
という目的意識を持って取り組むと他の選手と差がつけられますよ!
参考
佐々部孝紀,【第44回】Warm Upの科学~基礎編 | Training Science (sasabekouki.com) ,Training Science~knowlidge is power~
David Bishop,「Warm Up I Potential Mechanisms and the Effects of Passive Warm Up on Exercise Performance」,
Sports Med 2003; 33 (6): 439-454
David Bishop,「Warm Up II Performance Changes Following Active Warm Up and How to Structure the Warm Up」,
Sports Med 2003; 33 (7): 483-498
Kenny, G.P., 「Muscle temperature and sweating during exercise: a new link? 」,Acta Physiologica, 2014; 212(1): p. 11-13.
公益財団法人日本スポーツ協会,「公認アスレティックトレーナー専門科目テキスト⑥ 予防とコンディショニング」
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